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2004.7.2 11番目の月 2004.7.2

チタンのロウ付け




 まず、チタンを帯状に切り出して、その平面部分に銅メッキを施し、銀ロウ付けしてみました。

 銀ロウは5分銀で、銀用の普通のフラックスを薄めて使いました。その結果、簡単にロウ付けできました。

 ただし、銅メッキしてある部分全体に銀ロウが流れるわけではなく、つくところとつかないところがあります。これはめっきの厚みや、密着性に問題があるためでしょう。

ロウ付け前の状態

密着性の悪い銅をはがした状態

 チタンが空気に触れて酸化したため、青く色がついています。




 このロウ付け部分の強度についてですが、銀ロウ部分の引きはがし、切削、研削試験等を行った結果、きちんと付いている場合はそれなりの強度があることがわかりました。

 銀ロウ付けした銀線を曲げても剥離しません。ただし、さらに逆方向に曲げたら折れるように剥離しました。

剥離した状態

 剥離する場所はチタン材と銀ロウ材の境界です。銀と銀の場合はもっと粘るので、それに比べると強度は弱いといえます。

 また、エンドミルによる切削、および砥石、やすり、紙やすり等による研削を行った限りでは剥離しませんでした。

 というわけで、「めっき工房で銅めっきする方法でチタンを銀ロウ付けできるか」という問題については、一応できるということになります。




 ただし、テストを繰り返すうちにいろいろと問題も見つかりました。まず、銅めっきしてあっても高温では水素や酸素等のガスが銅めっき部分を透過するので、あまり長時間(数分)熱しているとチタン材が酸化して銅めっきがはがれてきます。この点からは厚く銅めっきした方がいいと言えます。

 しかしながら、銀ロウ付けを確実にするためには、銅めっき部分を合金化して溶かし、ロウ材がチタン材に到達する必要があります。銅の融点は銀ロウより遥かに高く、またチタン材の温度をなるべく上げたくないので、バーナーで加熱しただけでは銅を解かせません。銀ロウと合金化することで融点が下がり、溶けるのを期待するしかないのです。この点からは薄く銅めっきした方がいいと言えます。

 これらのバランスが悪いとロウ付けできませんし、またロウ付けできた場合でも強度低下の原因となります。




 次に、チタンの酸化は結構激しいので、たとえ銅めっきが確実に付いていても、周囲からどんどん腐食され、銅めっきが浮いてきてしまいます。

 例えば板材の端部に銅めっきした場合、どうしても角にはめっきがのらないので、その部分だけはチタン材がむき出しになります。そして、加熱直後から酸化が始まり銅メッキされている部分を侵食します。

 したがって、端部に均一に銀ロウ付けするのは非常に困難です。左図では、左端と中央右の部分にだけ銀ロウがのっています。




 最後に、例えロウ付けがうまく行った場合でも、他の部分のロウ付けなどでその部分を長時間(数分)高温に保っていると、強度が極端に下がり、手でも取れるようになってしまいます。原因としては、銀ロウに含まれる亜鉛との金属間化合物の生成や、溶けた銀ロウを通した酸素や水素の供給が考えられます。

 これらは全てチタンとの間にもろい化合物や酸化物を生成し、ロウ付け強度を下げます。というわけで、この方法によるチタンのロウ付けは万能ではなく、今回のように帯材の端部をロウ付けしてリングを作る、というような用途には使えない、と判断しました。

 おそらくロウ付け自体はできるはずですが、接合部にくぼみが残り、装飾品としては問題があります。また、くぼみが残ることから応力が集中し、強度にも不安が残ります。

 したがって、一番単純で技術的問題のない「丸棒から削り出す」という方法を取ることにしました。数十万年前から知られている方法です。




冨士 俊雄
Toshio Fuji
tofuji@po.jah.ne.jp