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2004.7.2 11番目の月 2004.7.2

チタンの加工方法




 一般的に、金や銀でリングを作る場合、

a. 板材や線材を切断し、リング状に曲げてロウ付けする方法

b. ロストワックス法によって鋳造する方法

 のどちらかを使います。実は、

c. 丸棒から削り出す

 というより簡単な方法があるのですが、「大量の切りくずが出てもったいない」という理由からまず使われません。また、b.の鋳造はチタンの融点が1667度と高く、真空を保つ必要があるため、金や銀を鋳造するための簡単な設備では無理です。

 金の鋳造が始まったのは1万年近く前、チタンの鋳造が工業的にできるようになったのはわずか60年前、そのぐらい難しさに差があるわけです。それで、最初はa.の方法で加工することにしました。




まずチタン(TB340)の板材を買ってきました。東急ハンズ渋谷店で、2*100*200mmの板材が3,108円でした。

 これを8*100mmの帯状に切り出すわけですが、この作業は普通の糸鋸でできます。チタンは難作材ですが、全体を通した加工性はステンレスと同じか、少し楽な程度です。糸鋸の刃はバローべの4/0番を使いました。

糸鋸




 次に、手持ちの銀ロウやフラックスを使ってロウ付けのテストをしてみました。できないとは聞いていましたが、確かに全くできませんでした。

銀ロウとフラックス

バーナー

 ステンレスの場合は、ロウ付けする温度(700度ほど)まで熱してもそれ程酸化は進まず、フラックスが働けば酸化から守ってくれるのですが、チタンの場合は、ロウ付けする温度でフラックス自体と激しく反応し、黒い化合物を作ります。この化合物の厚さは目に見えるほど厚く(後で冷却してはがして見るとわかる)、この上にある溶けたロウ材が内部のチタンに接触できないので、ロウ付けできないわけです。

 したがって、チタンのロウ付け(溶接の場合も同じ)では、空気(酸素)に触れさせずにチタンの温度を上げ、ロウ材と接触させる必要があります。調べたところ、現在チタンをロウ付けするために取られている方法が以下の4通りあることがわかりました。

a. 真空槽の中でロウ付けする。工場でメガネなどの小物を大量生産する場合にとられる手法です。酸素がないので、チタンは酸化しません。一番安全です。

b. 不活性ガスを吹きつけながらロウ付けする。Tig溶接と呼ばれている方法で、真空槽に入らない大きな機械でもろう付けできます。チタンの表面は不活性ガスに覆われているので、酸化しません。当然専用の溶接機(基本的には電気溶接機です)とガス(アルゴン)が必要で、私は持っていないのでできません。また、細かい物のロウ付けには不向きです。

c. チタン専用のフラックスを使う。チタン専用のフラックスというのが存在するようですが、今回私が探した限りでは入手できませんでした。チタンの表面がフラックスによって守られるので、酸化しません。

d. めっきしてからロウ付けする。ニッケルなどをめっきしてからろう付けすれば、チタンの表面がめっきされた金属で守られ、酸化しません。めっき自体が難しいのですが、初期のチタン製メガネフレームなどではこの方法が使われていました。

 私としては、一番簡単そうなc.から検討したわけですが、前述のようにチタン用のフラックスは入手できませんでした。そこで、次善の策としてd.のめっき法を検討することにしました。a.の真空槽を使う方法では、真空槽と真空ポンプを買うのに十数万円かかり、さらに内部に電気炉を入れる必要があるので、簡単ではありません。




 そこで、東急ハンズ新宿店で「めっき工房」というのを買ってきました。価格は10,000円強でした。

 私は、同種の装置でPromexというのも持っているのですが、購入したのが10年以上前で、ずっと使っていなかったため、めっき液が全滅していたのです。

 その他、銀やニッケルの無電解めっきというのも検討したのですが、とりあえず、安価にいろんな金属のめっきが試せるめっき工房から始めることにしました。

 最初に書いたように、チタンはステンレスやアルミと同様に、めっきできない金属です。めっき工房の取り扱い説明書にもそう書いてあります。しかし、それはチタンという金属自体がめっきできないのではなく、表面の酸化膜が邪魔しているだけです。

 つまり、めっきしながらその酸化膜をはがしてやればめっきできるはずです。この、「めっきしながら酸化膜をはがす」というアイディアの元は、30年ぐらい前に読んだ「子供の科学」という雑誌の中にありました。

 一般的に、アルミはハンダ付けできない金属とされていますが、そこには「ハンダ付けしながらアルミの表面をハンダごてで強くこすると、酸化膜がはがれてハンダ付けができる」と書いてありました。

 実際自分でも試して「なるほどね」と思い、いまだに覚えているわけです。めっきしながら表面を適切に削る必要があるため、用途は限られますが、今回の場合はうまくいくように思えました。




冨士 俊雄
Toshio Fuji
tofuji@po.jah.ne.jp