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2004.7.2 11番目の月 2004.7.2

はじめに




 しばらくぶりにリング(指輪)を作ろうと思い立ちました。

 私が初めてリングを作ったのは1986年で、既に20年近く経っていますが、材料も技術もほとんど変わっていません。

 実際、当時買った工具や材料をいまだに使っています。最初に使った金属は銀系の合金で、その後金系の合金を使って鋳物を作ったりもしましたが、基本的には柔らかくて加工性のいい貴金属です。

 金や銀は確かにいい金属ですが、柔らかいために強度が低い、傷がつきやすいという欠点もあります。その点白金は高い強度を持っていますが、金よりも高価で、融点が高く加工性は悪くなります。

 また、機械加工の世界では他にもいろいろな金属を扱ってきましたが、錆びてしまったり、きれいでなかったり、と装飾用に使えそうなものは見当たりません。

 そこで、最近になって身近になってきたチタンを試してみることにしました。




 金や銀と違ってチタンは地上にたくさんある金属です。そして、人体に対する毒性が全くありません。例えば、二酸化チタンは代表的な白い顔料で、絵の具や化粧品、チョコレートのコーティングなどにも使われています。また、軽くて耐食性があり、強度も高いので機械材料としても優れています。このようにチタンには多くの優れた性質があるのですが、金属材料としてのチタンはあまり普及していません。それには二つの理由があります。

 一つは反応性が高いために精練コストがかかること、もう一つは溶接やロウ付けが難しいことです。チタンが高い耐食性を持っている理由は、金や銀が耐食性を持っている理由とは全く異なります。金や銀は、金属それ自身が酸素等と反応しにくい性質を持っていますが、チタンはすぐに反応してしまうのです。ただし、酸化物が安定であるため、反応はすぐに止まります。それで、実用上は「耐食性がある」ということになっているのです。

 ステンレスやアルミも同じ理由で耐食性があります。そして、これらの金属は「表面に透明な酸化層を持っている」という共通点から、「めっきしにくい」、「溶接しにくい」という性質も共通しています。電気製品などで、金属面に傷がつかないように保護フィルムが貼ってある場合がありますが、あの保護フィルムが自然に金属の表面にできる、と考えると判りやすいでしょう。

 アルミやステンレスは溶接が難しい材料ではありますが、市販の材料でロウ付け(銀ロウなど融点が低い金属を使って溶接すること)ができます。しかしながらチタンは、今回調べた限りでは、ロウ付けするための材料が入手できませんでした(どこかには存在するようです)。このように、高価で加工が難しいため、チタンの用途は限られていました。しかしながら、ここ十数年で加工法がいろいろと研究された結果、だんだんといろいろな分野で使われるようになってきたというわけです。

 金属材料としてのチタンの代表的な用途には、メガネフレーム、航空機のエンジン、ゴルフクラブなどのスポーツ用品、橋脚など海の中の構造物、人工関節などがあります。みんな、塩分を含んだ環境への耐久性や、軽くて強く、高温に耐えるという特性を生かした分野です。




冨士 俊雄
Toshio Fuji
tofuji@po.jah.ne.jp